今回の記事では、【セイバーメトリクス】についてご紹介します。
セイバーメトリクスという考えが普及する以前は、投手であれば勝敗数や防御率、野手であれば打率や打点といった指標が重要視されていました。
特に日本では、未だに打率を重要視する考えが根強く残っています。
しかし、投手の勝敗数や野手の打率だけでは本当にその選手が優秀かどうかまで判断する事が出来ません。
そこで選手が優秀かどうかを適切に評価するために、【セイバーメトリクス】という考えが重要になってきます。
本記事を読めば、【セイバーメトリクス】について理解出来るようになります。
また、代表的な野球指標を併せてご紹介するので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【セイバーメトリクス】について理解すれば、野球を見る楽しみが増える事、間違いなしですよ。
【野球】セイバーメトリクスとは?
セイバーメトリクスとは、「野球データを統計学の視点で分析し、選手の評価やチームの戦略を考える分析手法」のことです。
セイバーメトリクスの考えが普及する以前は、選手を評価する際にこれらの成績が重要視されるのが一般的でした。
- 投手を評価する場合は、「勝敗数」や「防御率」
- 野手を評価する場合は、「打率」「本塁打」「打点」「盗塁」
特に日本では「打率」を重要視する考えが、未だに根強く残っているんですよね。
もちろん、打率が高い選手が優秀である事に違いないのですが、それだけで選手を評価するのは無理があります。
セイバーメトリクスの様々な指標を用いれば、選手をより的確に評価する事が出来るようになるんです。
セイバーメトリクスは、統計学を基に選手を評価する手法なんやね!
セイバーメトリクスを用いて選手を評価する一例
例えば、2018年のヤクルトスワローズの坂口選手とバレンティン選手の打率を比較してみましょう。
坂口選手の方が圧倒的に打率が高く、打撃では坂口選手の方が貢献しているように思えます。
しかし、セイバーメトリクスでよく用いられる、OPSという指標も合わせて比べてみましょう。
OPSという指標では、バレンティン選手の方が高い数値となっています。
OPSという指標は得点への相関性(その指標がどれだけ得点に影響するか)が高い指標として有名で、OPSが高いほど打撃での貢献度が高い事を表しています。
つまり、打率だけだと坂口選手の方が圧倒的に優秀に見えていましたが、セイバーメトリクスの指標を用いる事で、実はバレンティン選手の方が、打撃での貢献度は高い事が分かります。
このように、従来の打率信仰では見えてこなかった、その選手の評価が出来るようになるのが、セイバーメトリクスの面白い所なんです。
セイバーメトリクスの指標を使って選手を見ると、今まで気づかなかった面白い特徴が見つかったりします!
【野球】セイバーメトリクスの打撃指標一覧
ここでは、セイバーメトリクスの打撃指標をご紹介します。
OPS
長打率と出塁率を足した、打者を評価するのに便利なOPSを紹介します。
OPSの計算方法
OPSの計算方法は以下の通りです。
OPS=出塁率+長打率
出塁率と長打率に関しては、以下の記事でまとめています。
[kanren id=”1144″]
[kanren id=”1148″]
計算式自体はとてもシンプルですね。
この計算の簡単さが、OPSという指標が普及し始めている大きな理由の1つなんです。
出塁率は百分率ですが、長打率は百分率ではなく、1を超えることもあります。
そのため、OPSも百分率ではなく、その上限は5になっています。
OPSの計算:得点との相関性が高い
OPSという指標の最大の特徴は、
得点との相関性が高いことです。
得点との相関性を表すのが、得点相関係数(各指標の得点への影響度:1に近いほど得点への影響度が高い)です。
NPBでは、
打率の得点相関係数が約0.77
なのに対して、
OPSの得点相関係数は約0.94
と、かなり得点への相関性が高いことが分かります!
計算方法は出塁率と長打率を足しただけというシンプルさなのに、この得点への相関性の高さが、OPSという指標の最大の特徴なんです。
OPSの評価基準
OPSの考案者であるビル・ジェームズは、OPSを用いて、打者を下記のようにランク付け出来ると考案しています。
ランク | 評価 | OPS |
A | 素晴らしい | 0.900以上 |
B | 非常に良い | 0.8334〜0.8999 |
C | 良い | 0.7667〜0.8333 |
D | 並 | 0.7000〜0.7666 |
E | 平均以下 | 0.6334〜0.6999 |
F | 悪い | 0.5667〜0.6333 |
G | 非常に悪い | 0.5666以下 |
もちろん、その年のリーグの平均OPSにより、評価に多少の差は生まれます。
一般的には、OPSが0.800を越えていれば、間違いなく優秀な部類に入ると覚えておきましょう。
逆に、OPSが0.7以下では、平均以下の場合が多いです。
OPSの計算に走塁能力は加味されない
このように、OPSは簡単に計算できる上に得点への相関性が高い優秀な指標であることが分かりました。
しかし、OPSがあれば全て解決という訳ではなく、欠点もあります。
それが、
打者の走塁能力が加味されない
という点です。
単打を打って、二塁への盗塁を決めた場合、OPSは1.000
二塁打を打った打者のOPSは2.000
になります。しかし、結果としてはその打者の能力で二塁まで進塁した事に変わりはありません。
このようにOPSは、盗塁等の打者の走塁能力は計算に入っていないことが、欠点の1つです。
OPSの計算はスラッガータイプが有利
また、出塁率と長打率を足すという計算の都合上、出塁率と長打率の価値が同じになっています。
そのため、
単打が多いが走塁能力が高いリードオフマンタイプの打者
よりも、
走塁能力は無いが長打が多いスラッガータイプの打者
の方が評価されやすい指標、ということになります。
後で記載するOPS ランキングを見ると、俊足好打が特徴の選手よりも、一発長打がある選手の方がより多くランクインしてることが分かります。
OPSの計算だけでは、打者のタイプまでは判別できない
また、OPSという指標だけでは、打者がリードオフマンタイプなのか、スラッガータイプなのか判別は出来ません。
例えば、OPSが同じ0.800だとしても、
出塁率0.400 長打率0.400
出塁率0.300 長打率0.500
では、打者のタイプが全然違います。
そのため、OPSだけで打者の能力を判断することは難しいです。
出塁率と長打率を併せて見ることで、打者の能力が見えてくるようになりますよ。
過去10年の各リーグ平均OPSの計算
過去10年間のセ・リーグ、パ・リーグの平均OPSは以下の通りです。
年度 | セ・リーグ | パ・リーグ |
2008 | 0.715 | 0.732 |
2009 | 0.703 | 0.740 |
2010 | 0.740 | 0.739 |
2011 | 0.642 | 0.656 |
2012 | 0.648 | 0.658 |
2013 | 0.699 | 0.708 |
2014 | 0.720 | 0.707 |
2015 | 0.672 | 0.703 |
2016 | 0.698 | 0.706 |
2017 | 0.696 | 0.708 |
リーグ平均OPSほ年により少しばらつきがありまく。
リーグ平均のOPSを見ることで、その年が打高なのか打低なのか分かります。
ばらつきはありますが、概ね0.700が平均という所でしょうか。
そのため、OPSが0.700以上あれば、リーグの平均的な打者よりも優秀だという1つの目安になります。
ぜひ、この数字を参考に、色んな選手のOPSを眺めて見て下さい。
チームOPSと得点数の関係
過去5年分のチームOPSと、得点数の相関関係を見ていきます。
[say name=”かつを” img=”https://katsuwopapa.com/wp-content/uploads/2019/05/icon-katsuwopapa1e.jpeg”]
驚くような相関関係が見れましたよ!
[/say]
過去5年分のチームOPSと得点データ
過去5年間のセリーグのチームOPSと、得点数の関係は以下の通りです。
チーム | 年度 | チームOPS | 得点 |
広島 | 2018 | 0.780 | 718 |
2017 | 0.769 | 736 | |
2016 | 0.765 | 684 | |
2015 | 0.681 | 506 | |
2014 | 0.757 | 649 | |
ヤクルト | 2018 | 0.751 | 645 |
2017 | 0.644 | 473 | |
2016 | 0.709 | 594 | |
2015 | 0.699 | 574 | |
2014 | 0.752 | 667 | |
巨人 | 2018 | 0.726 | 616 |
2017 | 0.691 | 536 | |
2016 | 0.694 | 519 | |
2015 | 0.667 | 489 | |
2014 | 0.712 | 596 | |
DeNA | 2018 | 0.724 | 563 |
2017 | 0.702 | 597 | |
2016 | 0.694 | 572 | |
2015 | 0.679 | 508 | |
2014 | 0.700 | 568 | |
中日 | 2018 | 0.706 | 596 |
2017 | 0.666 | 487 | |
2016 | 0.662 | 500 | |
2015 | 0.657 | 473 | |
2014 | 0.689 | 570 | |
阪神 | 2018 | 0.697 | 563 |
2017 | 0.698 | 589 | |
2016 | 0.662 | 506 | |
2015 | 0.661 | 465 | |
2014 | 0.710 | 599 |
ホーム球場によってチームOPSの数値が高くなりやすい、高くなりにくいの差はありますが、ここ数年の広島のチームOPSと得点の高さがずば抜けています。
ここ数年の広島の得点力の高さよ…そら強いわ
相関係数は驚異の0.96
チームOPSと、チーム得点数の関係をグラフに表してみましょう。
チームOPSが高いほど、チームの得点数が多くなる傾向にある事がわかります。
チームOPSと得点との相関係数を計算すると、驚異の0.96という相関性の高さでした。
相関係数:ある2つの数値の関係性の高さを数値で表したもの。1に近いほど関係性が高い。
チームのOPSが高いほど、チームの得点数は高くなる。
最近、各選手のOPSを重要視しているのは、このようなデータに基づいた裏付けがあるからです。
OPSの得点への相関係数の高さは改めて凄いな…!
【野球】セイバーメトリクスの投手指標一覧
ここでは、セイバーメトリクスで投手に用いられる指標をご紹介します。
【野球】QS(クオリティスタート)
クオリティスタート(QS)とは、先発投手が6回以上を3失点以内に抑えることを言います。
1つだけ注意点があり、仮に6回を3失点で抑えていた投手が、7回も登板し1失点し、7回4失点となった場合には、クオリティスタート(QS)は記録されません。
あくまでも、6回以上を3失点以内に抑えた場合にのみ、クオリティスタートは記録されます。
クオリティスタートの持つ意味としては、「先発投手として十分な責任を果たし、試合を作った」と言えます。
仮に全ての登板で6回3失点(3自責点)の場合、防御率は4.50となるので、防御率だけを見ると優秀なピッチャーとは言いにくいかもしれません。
しかし、先発投手として一度も試合を壊さなかったという点では、自チームの立場から見ると中継ぎ投手の管理もしやすく、優秀なピッチャーであると言えます。
これが、クオリティスタートの基本的な考え方になります。
6回以上を3失点以内、先発投手としての役割を果たしたって意味合いやね!
【野球】QS率(クオリティスタート率)とは?
クオリティスタート率(QS率)とは、先発登板の機会のうち、どのくらいの割合でクオリティスタート(QS)したか、を表す指標です。
例えば、10試合先発登板した投手がいて、そのうち6回の登板でクオリティスタート(QS)を達成したとしましょう。
その場合のクオリティスタート率(QS率)は、
6(QS数)÷ 10(先発登板数)=0.6=60%
となります。
クオリティスタート率(QS率)は、高ければ高いほど、先発投手として安定感があることを表しています。
ちなみに、クオリティスタート率はどれくらいあれば優秀なのか、各球団のQS率を見るとある程度分かります。
2018年の各球団のQS率は以下の通りです。(2018年10月5日現在の数値)
QS率 | |
広島 | 45.07 |
ヤクルト | 40.71 |
巨人 | 50.70 |
DeNA | 32.14 |
中日 | 48.59 |
阪神 | 47.10 |
西武 | 51.05 |
ソフトバンク | 46.10 |
日本ハム | 48.94 |
オリックス | 52.45 |
ロッテ | 47.10 |
楽天 | 49.30 |
DeNAが唯一の30%台と低い数値となっていますが、概ね40%〜50%が各球団の平均値。
そのため、QS率が60%以上あれば、確実に平均値よりも上だと言えるので優秀な部類に入ります。
QS率を見れば、先発投手の安定感を知ることが出来ます!
【プロ野球】2018年各リーグQS率(クオリティスタート率)ランキング
2018年の各リーグのQS率ランキングは以下の通りです。(2018年10月5日時点での数値)
セリーグ | QS率 | パリーグ | QS率 |
大瀬良 | 76.92 | 岸 | 69.57 |
メッセンジャー | 70.37 | 菊池 | 69.57 |
菅野 | 70.37 | 涌井 | 68.18 |
ガルシア | 65.38 | 上沢 | 68.00 |
東 | 62.50 | マルティネス | 68.00 |
山口 | 61.90 | 西 | 60.00 |
ブキャナン | 59.26 | 則本 | 57.69 |
ジョンソン | 58.33 | 山岡 | 56.52 |
多和田 | 53.85 |
大瀬良投手の76%というQS率は見事ですね。
2018年シーズンは、4回登板すれば3回はクオリティスタートしてくれるという抜群の安定感でした。
さすがに規定投球回に到達する投手は、QS率が平均以上の投手ばかりやね!
【プロ野球】各球団の勝利数とQS率(クオリティスタート率)の相関関係
ここからは、クオリティスタート率(QS率)が、各指標とどのような相関関係を持つのか、分析していきます。
まずは、各球団の勝利数とQS率に相関関係はあるのか?見ていきましょう。
各球団のQS率と勝利数から相関係数を計算したところ、0.02と極めて低い相関性である事が分かりました。
というのも、同じようなQS率(主に50%前後)であっても、球団の勝利数に明らかな差(上は80勝、下は60勝)があるためです。
そのため、各球団のQS率自体は、勝敗数に大きく影響しない事が分かります。
QS率はある程度収束するから、そのままチームの勝利に直結するかどうかとは別問題みたいやね。
【プロ野球】先発投手の勝利数・敗戦数とQS率(クオリティスタート率)の相関関係
次は、規定投球回に到達した先発投手の勝利数及び敗戦数と、QS率の相関関係を確認してみましょう。
グラフを見たら明らかなように、相関性は高くありません。
相関係数は、勝利数とQS率で0.31、敗戦数とQS率で-0.30(グラフが右肩下がりの傾向のためマイナスの数値)でした。
QS率の数値自体は、あまり投手自身の勝敗数にも影響しにくいようです。
QS率が低くても勝てる投手もいるし、逆に高くても勝てない投手もいるもんね。
【プロ野球】先発投手の防御率とQS率(クオリティスタート率)の相関関係
次に、先発投手の防御率とQSの相関関係を確認してみましょう。
先発投手の防御率とQS率の相関係数は、-0.61です。
QS率が高いほど、防御率の数値は低い傾向にあるので、相関係数の数値はマイナスになっています。
先発投手の防御率とQS率には、一定の相関性があることが分かります。
QS率が高い投手は、それだけ6回以上を3失点以内に抑える回数が多いため、自ずと防御率も良化する傾向があるようです。
QS率の高い投手は防御率も良い数値の傾向にあるため、それだけ先発投手として安定感があると言えます。
こういった相関性がある指標同士を関連づけるのが、データ分析の面白い所ですね。
QS率が高い投手はそれだけ防御率の数値も良い傾向にあるんやね!
FIP(エフアイピー)
FIPとは、「投手自身がコントロール出来る部門に着目した、擬似的な防御率」を表す指標です。
この「投手自身がコントロール出来る部門」というのが、「奪三振」「被本塁打」「与四球」の3つの投手成績のことです。
FIPという指標は、先ほどご紹介した「グラウンド内に飛んだ打球の結果は投手にはコントロール出来ない」というBABIPの考えを基にしています。
そのため、「投手自身でコントロール出来る部門」に着目し、投手の能力を評価しようという指標になります。
FIPについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧下さい。
>>【野球指標】FIP/DIPSとは?投手個人の能力を把握するための指標
[card2 id=”1265″ target=”_blank”]
WHIP(ウィップ)
WHIPとは、「投手が1イニングあたりに出した走者の数」を表す指標で、投手の安定感を評価することが出来ます。
計算自体はとても簡単ですし、指標が持つ意味も分かりやすい指標です。
WHIPの値が低いほど、ランナーを背負わないので安定感のある投手ということになります。
【野球指標】WHIPとは?
WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)とは、「1投球回あたりに、何人の走者を出したか」を表す野球指標の1つです。
WHIPは、以下の計算式で求めることが出来ます。
WHIP=(与四球+被安打)÷投球回
計算式は本当にシンプルで、とても分かりやすいですね。
WHIPの数値が1.0なら、1イニングに1人走者を出し、2.0なら1イニングに2人走者を出す計算になります。
【WHIP】は投手が1イニングあたりに出した走者の数のことなんや!計算式もシンプルで簡単やね!
WHIPの評価基準
WHIPの数値の評価基準は、一般的に以下のように表す事が出来ます。
引用元:Wikipedia WHIP
WHIPは1.0を下回ると、めちゃくちゃ優秀です。
先発投手の場合は、1.2あればローテーションのエースクラスと言われています。
平均が1.32前後なので、この値が目安の一つになりますね。
WHIPは1.2以下なら優秀な部類なんやね!
WHIPの注意点
WHIPという指標には、いくつか注意点があります。
[box class=”box33″ title=”WHIPの注意点”]
- 長打が考慮されない
- 守備の影響を大きく受ける(BABIPの影響を受ける)[/box]
WHIPは計算式の都合上、単打であっても本塁打であっても、走者は1人とカウントします。
つまり、四球は少ないけれど、長打をよく打たれる選手は、WHIPの数値は優秀な割に、それほどの成績が残せない可能性が高いです。
また、WHIPの数値は被安打の影響を大きく受けます。
被安打は、セイバーメトリクス上では、「投手ではコントロール出来ない部門=BABIPの影響を大きく受ける」と考えられています。
BABIPについては、下記の記事で詳しく説明しているので、ご覧下さい。
[kanren id=”1277″]
そのため、WHIPという指標だけで選手を評価するのではなく、他の指標と比べながら、投手の安定感を把握するのがベターです。
WHIPだけで投手の良し悪しを判断するのは間違ってるんやね!
【野球指標】WHIPと防御率の相関関係
WHIPが低いと優秀な投手であるかどうかを把握するために、防御率とWHIPの関係を調べてみましょう。
データ分析に用いたのは、2018年の規定投球回到達者です。
2018年の規定投球回到達者の、WHIPと防御率は以下の通りです。
これをグラフ化してみましょう。
横軸がWHIPの値、縦軸が防御率を表しています。
WHIPの値が低いほど防御率の値が低く、WHIPの値が高いほど防御率も高くなるデータが得られました。
WHIPと防御率の相関係数は「0.79」と、比較的高い相関性が見られました。
規定投球回に到達する程、シーズンで多くのイニングを投げた選手の場合は、WHIPの値と防御率の値にある程度右肩上がりの傾向が見られるようです。
このデータからは、WHIPが低いほど、防御率は低く優秀な投手であると言えます。
WHIPと防御率には高い相関性が見られたね!これは面白いデータや!
2018年WHIPランキング
2018年のWHIPランキングは以下の通りです。
さすがに規定投球回に到達する選手は、揃って優秀な数値を残していますね。
楽天の岸投手、巨人の菅野投手、広島の大瀬良選手、西武の菊池選手はWHIPがほぼ1.0に近い数値で、1イニングあたり1人のランナーしか許さない計算になります。
許した走者の絶対数が少ないので、これらの投手は「安定感がある投手」と言えます。
1年間ローテーションを守れる投手は、揃ってWHIPの数値が優秀なんやね!
BABIP(バビップ)
BABIPとは、「グラウンド内に飛んだ打球が安打になる確率」を表す指標です。
このBABIPという指標こそが、いかにもセイバーメトリクスらしい指標なんですよね。
というのも、投手のBABIP(以下、被BABIPと表記)は、投手のタイプによらず、およそ0.300に収束するという、非常に面白いデータがあるんです。
これはどういうことかというと、「バットに当たった打球は、どんな投手であっても、長い期間で見れば3割は安打になり、7割はアウトになる」ということを表しています。
言い換えると、「グラウンド内に飛んだ打球の結果(安打になるか否か)は、投手自身はコントロール出来ない」ということになります。
これが、セイバーメトリクスの面白い考え方の代表例ですね。
BABIP(バビップ)とは?
BABIPとは、「本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合」のを表す指標です。
投手のBABIPについて計算する場合は、以下の式になります。
BABIP=(被安打-被本塁打)÷(打席-与四死球-奪三振-被本塁打)
投手のBABIPを見る場合は、分母に犠打を加える場合もあります。
投手のBABIPは被BABIPと呼ばれることが多いです。
野手のBABIPは以下の計算式で求めることが出来ます。
BABIP=(安打-本塁打)÷(打数-三振-本塁打+犠飛)
また、投手と野手でBABIPの特徴は異なります。
BABIPは、グラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合を表す指標なんやね!
BABIP(バビップ)の特徴
BABIPは、投手と野手で特徴が異なるため、指標の取り扱い方に違いが出てきます。
ここでは、投手と野手それぞれのBABIPの特徴をまとめていきます。
投手のBABIPの特徴
投手のBABIP(以下、被BABIPと表記)の特徴は、以下の通りです。
[box class=”box30″ title=”投手のBABIP(被BABIP)の特徴”]
- 長期間での被BABIPの数値は投手のタイプに関わらず殆ど差が無い
- 被BABIPの平均値は約0.300前後で推移
- 被BABIPが低ければ運が良く、被BABIPが高いと運が悪いとされる[/box]
投手の場合、投手のタイプによって被BABIPに差が無い、というのが最大の特徴です。
被BABIPは、数年以上のスパンで見ると一定の値(約0.300前後)に収束する事が分かっています。
そのため、1年単位で見た場合に、被BABIPが0.300より極端に外れた場合は、運が良かった又は悪かったと考えられます。
被BABIPが低い(.250前後)と運が良かったとされ、逆に被BABIPが高い(.350前後)と、運が悪かったと考える事が出来ます。
かつお投手の被BABIPは0.300前後に収束するから、そこから大きく外れていれば運が良かった、悪かったと言えるんやね!
野手のBABIPの特徴
野手のBABIPの特徴は、以下の通りです。
[box class=”box28″ title=”野手のBABIPの特徴”]
- 打者のBABIPは打者のタイプによって差が出るため、選手毎の平均値と比較する
- 選手毎に見た打者のBABIPは、長い期間では収束する
- 一塁への到達速度が速い選手、打球速度が速い選手はBABIPが高く出やすい
- 選手自身の平均値と比較して、BABIPが高いと運が良い、BABIPが低いと運が悪いとされる[/box]
野手のBABIPは、投手とは異なり、打者のタイプによってBABIPの値に傾向が現れます。
例えば、イチロー選手のように、一塁への到達速度が速い選手は、普通の選手なら凡打になる当たりでも、内野安打にしてしまうため、BABIPが高くなりやすいんです。
一方で、極端なシフトを引かれるような打者(例えば強烈なプルヒッター)は、、BABIPが低く出る傾向にあります。
そのため、選手毎にBABIPの値が異なる傾向にあるため、投手のようにリーグ平均と比較するよりも、打者自身の平均のBABIPと比較すべきです。
かつお野手のBABIPは選手のタイプによって変わるんやね。長い目で見れば選手ごとに収束するから、選手の平均値と比較すればええんやね!
BABIPの活用例
ここでは、BABIPの具体的な活用例を投手・野手ともにご紹介します。
BABIPを用いれば、運の要素を絡めることが出来るので、選手のある年の成績が選手本来の実力なのか?はたまた運が良かっただけなのか?ある程度判断する事が出来るようになりますよ。
投手のBABIP活用例~今永昇太選手の場合~
横浜DeNAベイスターズの今永昇太選手の成績を例に、BABIPの活用例をご紹介します。
今永選手の2016年〜2018年の防御率とBABIPの値は以下の通りです。
防御率 BABIP 2016年 2.93 0.264 2017年 2.98 0.262 2018年 6.80 0.344 2016年、2017年と防御率は2点台でとても優秀に見える今永選手の成績ですが、この2年のBABIPは.260台と、平均値の0.300よりもかなり低めの数値でした。
つまり、グラウンド内に飛んだ打球が、平均よりも多く「運良く」アウトになっていたため、防御率の数値は良かった、と考える事が出来ます。
そんな今永選手ですが、2018年には防御率が6.80とすさまじく悪化してしまいました。
2018年のBABIPは0.344と、かなり運が悪い部類の数値となっています。
自身の不調の影響ももちろんあったと思いますが、運の悪さも重なり、過去2年とはかけ離れた成績となってしまいました。
このように、いつも見る成績とBABIPを一緒に見る事で、単に実力で成績が悪化したのか、運の影響が少なからずあったのかどうかが、分かるようになります。
今永選手の場合は、BABIPが平均値付近の年がまだ無いので、来年以降の成績に、注目したいところです。
かつお今永選手はBABIPの影響を大きく受けた選手の一人やね。
野手のBABIP活用例~山田哲人選手の場合~
ヤクルトスワローズの山田哲人選手の成績を基に、野手のBABIP活用例をご紹介します。
山田哲人選手がブレイクした2014年〜2018年までの主要な成績とBABIPは以下の通りです。
打率 OPS BABIP 2014年 0.324 0.941 0.344 2015年 0.329 1.027 0.353 2016年 0.304 1.032 0.312 2017年 0.247 0.799 0.286 2018年 0.315 1.014 0.350 通算 0.327 2017年に大きく成績を落としてしまいましたが、実はBABIPの値もかなり低い値だったんですね。
山田哲人選手の2018年までのBABIPの平均値が0.327なので、2017年はかなり運が悪い年だったために、成績が下降したと考える事が出来ます。
山田哲人選手の実力なら、インフィールドに飛んだ打球の内平均して32.7%は安打になる筈だったのが、2017年は28.6%しか安打にならなかった。
一見不調のように見えますが、実は運による影響がかなり悪い方に出た影響が大きかったんですね。
また、BABIPが0.350となった2018年は、ブレイクした直後の成績と同様の活躍ぶりでした。
このように、BABIPを一緒に見ると、選手の成績を1年単位で見た時に、その成績は実力からなのか、はたまた運の影響が大きかったのか、判断する事が出来るようになります。
かつお山田哲人選手の2017年の成績降下は、運が悪かったと言えるんやね!
プロ野球BABIPランキング2019
2019年のプロ野球のBABIPランキングは、以下のサイトで詳しくまとめられています。
かつお投手のBABIPがまとめられているサイトが見つけられませんでした…見つかり次第、追記します…!
【野球】セイバーメトリクスの守備指標一覧
ここでは、セイバーメトリクスの守備指標をご紹介します。
UZR(ユーゼットアール)
UZRとは?
UZR(Ultimate Zone Rating:アルティメット・ゾーン・レーティング)とは、野手の守備能力を数値で評価出来るようにした指標です。
これまでは野手の評価と言えば、守備率(守備機会のうち、失策をしなかった割合)、若しくは失策(エラー)数そのもので評価される事が殆どでした。
しかし、守備率だけではその選手の守備能力が総合的に評価出来ているとは言えません。
守備力と一言で言っても、守備には下記のような様々な能力が求められます。
- 捕球能力
- 守備範囲の広さ
- 送球の正確さ
- 併殺プレーの速さ
これらの守備に求められる能力を総合的に数値で評価出来るようにした指標こそが、UZRなのです。
かつおUZRは、守備の総合力を数値で客観的に判断出来るようにした指標なんやね!
UZRの算出方法
UZRの算出方法は、以下のように決められています。
UZRの算出においては、まずグラウンドを多数の「ゾーン」に区分し、各ゾーンについて発生した打球の種類(バント・ゴロ・外野へのライナー・外野へのフライ)や速度(遅い・中間・速い)を記録する。そしてそれぞれのゾーンにおいて生じた特定の種類の打球についてリーグ全体でどれだけのアウトが記録されたかを算出する。このデータを基に、個別の野手のプレーを評価し、各種の補正を合わせて「リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか」を計算する。
簡単にまとめると、
[box class=”box30″ title=”UZRの算出方法”]
- グラウンドを各ゾーンに細分化
- 各ゾーンで発生した打球を、打球速度等のデータとして記録
- このデータを基に、個別の野手のプレーを、人が評価
- UZRは「平均(0)と比べてどれだけ失点を防いだか」が±の数値となる
- +ほど評価が高く、−ほど評価が低い[/box]
特徴的なのは、「打球速度等のデータを記録していること」と、「各プレーを人の手で評価していること」です。
そのため、私たちのような一個人では、打球速度のデータも手に入りませんし、全てのプレーを人力で評価する事も物理的に厳しいです。
では、UZRは誰がどのように算出しているのでしょうか?
現在、日本では「データスタジアム社」と「合同会社DELTA」の2つの機関がUZRのデータを取り扱っています。
合同会社DELTAは、一部のデータは無料で公開しているため、UZRの数値を確認する事が出来ます。
かつおUZRは、膨大な数のデータを人力で評価して、数値化してるんやね!
UZRの評価方法
最終的なUZRは、±の数値で評価出来ますが、実は守備に関する評価項目が細分化されています。
合同会社DELTAのデータでは、以下の4つの項目で守備力を評価しています。
[box class=”box30″ title=”UZRの評価ポイント”]
- ARM(送球貢献):外野手の捕殺及び進塁阻止を表す指標
- DPR(併殺貢献):内野手の併殺完成の貢献度を表す指標
- RngR(守備範囲):守備範囲の広さを表す指標
- ErrR(失策防止):平均的な状況と比較し、どれだけ失策したかを評価する指標[/box]
内野手は「DPR(併殺貢献)」、「RngR(守備範囲)」、「ErrR(失策防止)」の3つの指標で、
外野手は「ARM(送球貢献)」、「RngR(守備範囲)」、「ErrR(失策防止)」の3つの指標で、守備力を評価していきます。
参考までに、2018年から日本球界に復帰した、ヤクルトスワローズの青木宣親選手の守備指標を確認してみましょう。
イニング 1026 ARM(送球貢献) 0.1 RngR(守備範囲) -4.0 ErrR(失策防止) 0.3 UZR -3.6 ARM(送球貢献)とErrR(失策防止)は僅かながらプラスの数値ですが、RngR(守備範囲)の指標で−4.0とマイナスの数値だったため、UZRは-3.6と、総合的にはマイナスの評価となっています。
このように、今までの守備率だけでは見えてこなかった各項目毎の守備の能力が、数値で評価出来るようになっていまするのが、UZRの特徴です。
かつおUZRは4つの評価ポイントがあって、内野手と外野手で評価ポイントが微妙に違うんやね!
UZRの評価基準
UZRの評価基準は、大まかに以下のように定義する事が出来ます。
評価 UZR ゴールドグラブ級 +15 優秀 +10 平均以上 +5 平均 0 平均以下 -5 悪い -10 非常に悪い -15 UZRは相対評価なので、年度によっても異なりますが、ざっくりUZRが+10を超えたら優秀であると言えます。
逆に、UZRが−10を下回ってくると、かなり悪い数値です。
平均的な選手が守るよりも、その選手の影響で10点以上損している計算になります。
この±10という数値を一つの目安として、各選手のUZRを見る際の参考にして見て下さい。
かつおUZRは+10あれば、かなり優秀な部類に入るんやね!
UZRの注意点
UZRは、守備の各項目を数値で評価するという点では、とても画期的な指標ですが、いくつか注意点もあります。
UZRの主な注意点は以下の通りです。
[box class=”box33″ title=”UZRの注意点”]
- UZRはポジション毎の相対評価なので、一人数値が圧倒的に悪い選手がいると、平均的な選手の数値が上がってしまう傾向にある
- 投手・捕手は打球の処理機会が他のポジションに比べ少ないので、同じように評価出来ない
- UZRは1年単位ではばらつきが大きいので、複数年単位で評価するのがベター
- 最終的な評価は個人の判定であるため、評価は平等ではない[/box]
特に気を付けたいのが、「UZRはポジション毎の相対評価」であるという点です。
極端な話ではありますが、あるポジションで1人だけ守備が上手い選手がいて、残りの11人は守備が下手な選手が居た場合、1人の選手が圧倒的に高い数値が出てしまいます。
そのため、UZRの数値が高いから、歴代でもトップクラスの守備という評価は正しいとは言えません。
あくまでもそのシーズンの他の選手と比較した相対値が、UZRです。
絶対値ではないので、注意しましょう。
かつおUZRは相対評価。絶対値ではないから、ただ数字を比べるのは意味がないんやね!
2019年の各ポジションのUZRランキングについて、こちらの記事でまとめています。
>>プロ野球UZRランキング2019確定版!守備の名手はこの人だ![card2 id=”3242″ target=”_blank”]
【野球】セイバーメトリクスの総合指標一覧
ここでは、セイバーメトリクスだからこそ出来る、全ての選手の投球・打撃・走塁・守備を総合的に評価できる画期的な指標「WAR」をご紹介します。
WAR(ウォー)
WARとは、「投手と野手を同じ土俵で」かつ「野手の打撃・守備・走塁等を総合的な貢献度」を評価することが出来る、画期的な指標です。
今までは、選手を評価する際に、複数の指標を比較しながら、選手の評価をする必要がありました。
しかし、WARという指標は、これ1つだけで選手の貢献度を測ることが出来ます。
WARという指標の値が高ければ高いほど、チームの勝利に貢献した選手ということになります。
WARについては、以下の記事で詳しくまとめています。
>>【野球指標】WARとは?全ての選手の総合的な貢献度を数値で評価![card2 id=”1295″ target=”_blank”]
また、2018年のWARランキングについて知りたい方は、
>>プロ野球WARランキング2018!12球団で最も勝利に貢献したのは誰!?
をご覧下さい。[card2 id=”2483″ target=”_blank”]
セイバーメトリクスの打順の考え方は従来の日本式とは異なる
セイバーメトリクスの考えを基にした最適な打順の考え方は、日本で一般的な打順の組み方とは異なっています。
日本では、2番打者に送りバントが得意で小技が出来るけれども、比較的非力な選手を置くことが多いですよね。
これってセイバーメトリクスの考え方とは逆行していて、セイバーメトリクスの考えに基づくと、2番打者ってチームで1・2を争う好打者を置くべきなんですよね。
セイバーメトリクスの各打順の置くべき選手の考え方は以下のようになります。
1番:最も優れた打者(出塁率重視)
2番:最も優れた打者(出塁率重視)&併殺を回避できる一定以上の走力
3番:第2郡(次に重要)の打者
4番:最も優れた打者(長打率重視)
5番:第2郡(次に重要)の打者
6番:第3郡の打者(6>7>8>9の順)
7番:第3郡の打者(6>7>8>9の順)
8番:第3郡の打者(6>7>8>9の順)
9番:第3郡の打者(6>7>8>9の順)セイバーメトリクスでは、2番打者の方が3番打者よりも打力がある選手を置くべきという考え方なのです。
このセイバーメトリクスの最適な打順の考え方については、
>>セイバーメトリクスの打順の組み方とは?日本式は非効率だった!(作成中)
という記事で後日詳しくまとめる予定ですので、楽しみにしていて下さい!結論:セイバーメトリクスを理解すると野球の楽しみ方が増えます
今回の記事では、【セイバーメトリクス】についてご紹介しました。
統計学を基にしているので、考え方自体はとても斬新で面白い点が多いです。
その上、得点やその他の様々な指標との関連性がデータで表せるので、分析するのが好きな人にはたまらないですよね。
セイバーメトリクスの考えを知ることで、今までの観点とはまた違った観点で野球を見る事が出来るので、楽しみが増える事間違いなしです。
ぜひ、今回ご紹介したセイバーメトリクスの指標を覚えて、色んな選手の各指標の数値を見てみてください。
今まで応援していた選手の新たな一面が見つかるかもしれませんよ。
かつお好きな選手のセイバーメトリクスの指標を見てみましょう!思わぬ発見があるかもしれません!
以上、「【野球】セイバーメトリクスとは?指標で選手を評価する統計手法です」という記事でした
コメント